中央水研ニュースNo.1(平成元年9月発行)掲載 |
【新水研究発足にあたっての各部の抱負】 経営経済部の設立について
(その後の組織改正のため、現在この部署は存在しません) 新宮 千臣
中央水産研究所の発足にともない、経営経済部 が新設された。自然科学分野の研究が圧倒的勢力 を占め続けてきた水産研究所における当部の設立 は、これからの水産研究の方向に一つの示唆を与 えているように思われるのである。 経営経済部の当面の研究基本計画として、①漁 業・養殖業の生産構造の特質とその再生産過程の 解明、②漁業管理方式の社会・経済学的解明、③ 消費流通の動向と価格形成機構の解明、④国際的 漁業環境の分析、を掲げている。これらは特に新 しい研究課題ではなく、従来も個々には研究対象 になっていた課題を含むものである。したがって、 これらの課題を掲げたことの意味、更には当部を 設立したことの意味は、課題別研究と同時に問題 を総合的にみてゆくこと、すなわち漁業管理によ る生産過程と生産物が消費されるまでの一つの流 れを、その環境を含めて、システムとしてとらえ てゆくところにある。我が国に限ることではない が、資源・漁業管理研究が漁業生産にうまく結び つかないことはこれまでよく指摘されるところで ある。これは管理と漁業の展望がシステムとして 説明されていないところにも原因があるように見 受けられる。 漁業管理をシステムとしてとらえるとき、今日 のように情報の多様性を社会・経済構造の肥大化 が進行してしまうと、システムを構成する上下域 は水平の階層構造をどのように認識するかは非常 に難しい問題である。漁家構成、生産構造、消費 流通過程等どのレベルで階層構造としてとらえる かによって、価値判断の基準は異なり、システム 全体としての目標設定は変るはずである。したがっ て、漁業管理のための唯一無二の最善の方策では なく、適切な選択が求められることになる。 漁業システムが経済的効果を追及することは極 く当然であるが、その基準は管理の目標や役割と 合致するものでなければならない。それを漁業問 題にどう適用し得るか判断することが我々に課せ られた任務でもあるし、経営経済部設立の積極的 動機の一つであると理解している。 (経営経済部長)
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