中央水研ニュースNo.1(平成元年9月発行)掲載

【新水研究発足にあたっての各部の抱負】
環境保全部
(その後の組織改正のため、現在この部署は存在しません)
田端 健二

 環境保全部の前身である水質部は、我が国経済 の高度成長期から安定期にかけて、水質汚濁の漁 業影響に関して先導的な調査研究を行い、更に水 質汚濁調査のガイドライン、水産環境の要望基準 の作成等に主導的役割を果した。我々は先人の業 績と伝統に立脚し、海洋における汚染物質の挙動 を生物影響の解明のための基礎的研究を通じて漁 場環境の保全に貢献するべく、この度の組織替え で環境保全部へと生れ変った、水質化学、生理障 害、生物検定の3研究室で、それぞれ汚染物質の 海洋における動態と魚介類への移行・濃縮機構の 、 研究、生物検定法及び漁業資源への慢性影響評価 手法の研究等を行う。
 水濁法の制定から、20年近くが経過し、全国600 ほどの調査海域における環境基準の達成率は80% 程度に達している。化蕃法により、人間の健康に 問題ありとされた化学物質の環境にたいするクロー ズドシステムの確立が進められている。最近は温 室効果微量ガスによる地球規模の環境変動が懸念 されている。工場排水等による水質汚濁問題から、 近年はこのように人間環境、地球環境へと環境行 政も世間の関心も移行している。環境保全部は水 産環境サイドからこれら課題に積極的に参加し、 協力する一方において、このような動きの狭間に あって漁業だけが被害を被る問題が取り残されな いように研究者の目で常に監視し、間題を先取り してアピールしたい。
 環境保全部は臨海実験施設としての横須賀庁舎 に所属するため実験研究が主体となるが、課題は 常に現場から抽出する姿勢を貫く、ここ数年は有 機スズ化合物の毒性・生物濃縮性、海産魚による 生物検定法の研究に部の総力を注入した。今後も 種々の問題が生じると思われる。部員一同大いに 研鎌を積み、全国ただ一つの水産における環境保 全研究の専門部として、困難な問題に対処し、国 際的にも通用しうる業績を数多く残したい。
(環境保全部長)

nrifs-info@ml.affrc.go.jp
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