中央水研ニュースNo.1(平成元年9月発行)掲載 |
【新水研究発足にあたっての各部の抱負】 海洋生産部研究室の襲名披露 井上尚文
水産庁水産研究所の組織改編に伴い、平成元年 5月29日付にて海洋生産部が新しく発足した。当 部は旧東海区水産研究所の海洋部と放射能部を母 体として生まれ、4つの研究室で構成されている。 研究室の名称は数字を冠した従来の室名を廃止し、 それぞれの研究室における主要研究が表象される ように命名されている。 「名は体を表す」といわれる。当部の研究室の 性格や研究内容が果してその名の示すとおりに反 映されているだろうか?多少気にかかるところ である。誕生して半年、4つの研究室を簡単にご 披露しようと思う。 海洋生産部は基本的には旧海洋部と放射能部の 基本研究路線をそれぞれ受け継いでいる。すなわ ち、海洋生態系における生物生産に係る海洋構造 と変動機構の解明、栄養物質の収支等の物質循環 を通しての生物生産機構の解明及び放射性物質の 循環と生物への蓄積過程等に関する調査研究等が 海洋生産部における研究の主軸をなしている。 変動機構研究室:旧海洋部海洋第1研究室の研 究をほぼ全面的に引き継いでおり、魚類及びその 餌料生物の分布・移動並びに資源量変動等に関わ る海洋構造の把握とその変動機構の解明等、海洋 動態に関する研究を行う。 物質循環研究室:海洋第2研究室の再生による 研究室で、海域における生物生産に関わる物質の 現存量、輸送速度、化学的形態の変化速度及び物 質収支等の海洋生態系における物質循環に関する 研究を推進する。 低次生産研究室:旧海洋部第2研究室、資源部 資源第3研究室、放射能第2研究室の流れをそれ ぞれくむ研究室で、海域における生物生産の低次 の部分を担う動・植物プランクトンの分布・生態、 その生産維持機構及び捕食機構の解明等の低次生 物生産に関する研究を行う。 海洋放射能研究室:旧放射能部放射能第1研究 室の調査研究を踏襲した研究室で、水産物の安全 性を確保し、漁場環境の保全に資するため、放射 能のバックグランド値の蓄積を図るとともに、海 洋生態系内における放射性核種の循環・蓄積機構 の解明を中心に放射生態に関する研究を推進する。 以上、海洋生産部研究室の概要を簡単に述べた。 最近では地球的規模での環境変化が急速に問題化 してきた。この問題は広域的かつかなり長いタイ ムスケールの現象であるので、これらに対処する ためには新たな視点での水産海洋研究の構築が緊 急かつ重要な課題になっている。 (海洋生産部長)
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