■ 研究紹介 中央水研だよりNo.1(2006. 平成18年2月発行)掲載
水産経済研究連絡会の第一回研修会について Makoto Ohtani


「水産経済研究連絡会の第一回研修会について」
「水産経済研究連絡会の第一回研修会について」
 平成17年9月13・14の両日、中央水産研究所において、第一回研修会「水産物マーケティングリサーチの方法」を開催しました。講師は、水産物マーケティング研究を先駆的に推進されている小川砂郎氏(現神奈川県水産課主査)にお願いし、1都20県と2独法から41名の参加者がありました。
 マーケティングリサーチ手法の研修を第1回目に取り上げたのは、水産経済研究連絡会の設立に際して本分野における研究ニーズを把握するために都道府県の水試及び独法の水産研究機関を対象として平成16年5月に実施したアンケート調査において、本分野に対する研修の要請が非常に多かったからです。これは、水産物のブランド化が全国各地で見られることでも分かるように、魚価低迷への対処方策の一つとして漁獲物や水産加工品に付加価値をつけて販売する取組が増加していることが背景にあると考えることができます。
 研修は、分析事例を示しながらマーケティングリサーチ手法を紹介し、参加者に分析ソフトを使用してもらいながら実際の分析イメージを掴んでもらう形式を取りました。これは、本研修会が漁業現場や行政部門の要請に対応可能な研究手法をより実践的に習得することを目的としたからです。
 今回の研修テーマであるマーケティングリサーチを若干説明します。近年は海外からの輸入水産物の増加や国内産地間の競争、あるいは流通形態や消費スタイルの変化などの様々な要因によって、漁獲物や水産加工物などの価格が下落傾向にあります。そのため、これらの製品に対して差別化戦略に基づく高付加価値化を実現することによって価格上昇を期待する取組が増加しています。このような高付加価値化のためには、消費者ニーズや市場動向の把握に加えて、品質管理や販売方法の構築などの課題をクリアする必要が生じます。このような様々な課題を検討するために、マーケティング関連のデータを入手し分析することをマーケッティングリサーチと呼んでいます。
 本研修会では、マーケティングリサーチの基礎として、マーケティングの概念やデータの収集方法、そしていくつかの分析手法を講義しました。データの収集方法として、データの種類とその特徴やアンケートを実施する際の留意点として調査票の設計や設問項目の作成方法などが解説されました。また、分析手法として、多変量データを統合し新たな総合指標を作り出すための手法である「主成分分析」、多変量データに潜む共通因子を探り出すための手法である「因子分析」、消費者の価格受容範囲を推定する価格感度測定法である「PSM(Price Sensitivity Measurement)分析」、その他に「コレスポンデンス分析」や「コンジョイント分析」などが講義されました。
 今回の研修会は、ほとんどの参加者が経済研究の経験が無く、しかも二日間という短期間で集中的に多くの内容を研修することなったために苦しい面もあったかと思います。にもかかわらず、大変熱心に参加していただいたために、とても有意義な研修会になったのではないかと思います。このような研修会を契機として、水産経済研究分野の研究手法が実践されることで、地域の漁業生産の発展や活性化に少しでも役立つことが期待されます。
 なお、水産経済研究連絡会としては、このような研修会を来年度以降も開催することにしています。内容としては、研究ニーズが高い経営診断・設計手法などの研修を予定しています。今後の活動としては、すでに設置している総会の開催やメーリングリストの運営に加えて、ホームページを構築するなどして情報交流の拡充にも努めたいと考えています。水産経済研究連絡会はスタートしたばかりですが、今後も水産経済研究に関する情報と技術の交流を図ることによって、研究の進展及び水産経済分野の発展に寄与していきたいと考えています。
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