■ シリーズ 中央水研だよりNo.1(2006. 平成18年2月発行)掲載
シリーズ「書籍で知る日本の水産」第一回 鈴木信子・梅沢かがり History of fisheries in Japan - from old manuscripts deposited in our library Nobuko Suzuki / Kagari Umezawa


シリーズ
「書籍で知る日本の水産」
第1回
シリーズ「書籍で知る日本の水産」第1回
 研究所の図書館というと難しい本がたくさん並んでいてその上難しい顔したオジサンが留守番していて敷居(しきい)が高い!なんて思っている人はいませんか? もちろん、難しい本もたくさんありますが、難しいだけではなく、面白いんです。
 水産総合研究センター中央水産研究所図書資料館は、その名の通り水産に関する本を中心に所蔵しています。国内外で発行される図書資料や外国雑誌のほかに、旧『水産庁水産資料館資料』や『祭魚洞文庫(さいぎょどうぶんこ)』など漁業史を知る上でたいへん貴重な資料もあります。
 『祭魚洞文庫』?変な名前ですね。この文庫は、ある一人の人が個人的に集めた、魚や漁業にまつわる本のコレクションです。江戸時代の釣りの専門書や魚の図鑑、明治時代の教科書などもあります。この人は、名前を澁澤敬三(しぶさわけいぞう)といいます。おじいさんの澁澤栄一氏は日本に資本主義を根付かせた人でした。その跡を継ぐために、敬三氏は子供のころから好きだった動物学の研究をあきらめて経済界に入りました。病気療養のために訪れていた伊豆で、敬三氏は漁業の古文書(こもんじょ)を発見します。これがきっかけとなり、経済界の仕事のかたわら漁業史の研究に取り組みました。彼は良い資料を集め、それを研究者が利用できるようにすることに心を砕(くだ)きました。経済界に生きる敬三氏にとって、研究活動は自分に返りほっとできる場でもあったようです。『祭魚洞(さいぎょどう)』は敬三氏の号(がごう)ですが、『祭魚』とは魚を取っても食べずに並べて見て楽しんでいる獺(かわうそ)の故事をいうそうです。
 また、旧『水産庁水産資料館資料』は、戦後の漁業制度の大改革のために水産庁が集めた資料です。公文書、漁業権原簿、日本各地の古文書主に筆写本(ひっしゃぼん)などがあります。
 次号からは『祭魚洞文庫』などから一冊ずつ取り上げて紹介していきます。皆さんの興味のアンテナに届きますように!
 なお、旧『水産庁水産資料館資料』や『祭魚洞文庫』は貴重資料のため、利用には制限があります。できるだけ良好な状態で、資料を後世に伝えていくための配慮ですので、ご了承ください。
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