動物実験に関する指針

中央水産研究所動物実験に関する指針(pdf版

平成20年6月18日付け20水研中第233号

 動物実験は生命科学研究の基礎をなし、水産学の発展に大きく寄与している。 動物実験を行う際には、福祉の観点から動物の生命を尊重し、動物にできる限り苦痛を与えないように 措置する必要がある。動物への配慮は「動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号、 平成11年12月改正)」及び「実験動物の飼養及び保管等に関する基準(昭和55年総理府告示第6号)」に 明示されているように、科学的な研究の必要性と矛盾するものでなく、動物実験を行う上での基本的原則である。 中央水産研究所においても、動物実験が科学的のみならず倫理的に行われなければならないとの認識に立って、 ここに動物実験に関する指針を定める。

1.目的と適用範囲

 本指針は、中央水産研究所(以下「研究所」という。)において動物実験を計画し、 実施する際に遵守すべき事項を示すことにより、科学的にはもとより動物福祉の観点からも適正な動物実験の 実施を促すことを目的とし、研究所において行われるすべての動物実験に適用される。

2.定義

本指針における用語の定義は、次のとおりとする。

  • (1)「動物実験」とは、学術研究あるいは生物学的材料採取のために、 動物になんらかの拘束、処置を加えることをいう。
  • (2)「実験動物」とは、動物実験に供するための哺乳類をいう。
  • (3)「実験者」とは、動物実験を実施する研究者等をいう。
  • (4)「動物飼育施設」(以下、「施設」という。)とは、実験動物を維持、 繁殖、飼育、保管および動物実験を行う所をいう。
  • (5)「委員会」とは、施設および実験を管理するにあたり実質的な責任を 持つ動物実験委員会をいう。
3.実験計画の立案等
  • (1)実験者は、実験計画の立案にあたっては、動物福祉の観点から動物実験の範囲を 研究目的に必要な最小限度にとどめるため、適正な供試動物の選択及び実験方法を検討するものとする。この場合、 実験者は、委員会の意見を求め、有効、適切な実験を行わなければならない。
  • (2)実験者は、供試動物の選択にあたって実験目的に適した動物種の選定、 実験の精度、再現性を左右する供試動物の数、遺伝学的、微生物学的品質、飼育条件等を考慮しなければならない。
  • (3)実験者は、施設における供試動物の飼育の可能性を確認のうえ、 別に定める動物実験計画書を委員会に提出し承認を得なければならない。
4.動物の検収と検疫

 実験者は、動物の発注条件、異常及び死亡の有無、動物の状態、輸送方法、輸送時間等を確認するものとする。 また、実験者は、実験動物の検疫を必要に応じて実施しなければならない。

5.実験動物の飼育管理
  • (1)実験者は適正な施設、設備の維持に努め、動物の習性を考慮して適切な給餌、 給水等の飼育管理を行わなければならない。
  • (2)実験者は、実験中の動物について、施設への導入時から不要時にいたる期間中、 動物の状態を観察し、適切な処置を施さなければならない。
6.実験操作

  実験者は、麻酔等の手段によって、動物に無用な苦痛を与えないよう配慮するものとする。 このため、必要な場合には、委員会の判断を求めるものとする。なお、苦痛の排除に関する具体的な処置は、事前に関係者と十分な協議を行うものとする。

7.麻酔と鎮痛
  • (1)適切な麻酔剤、鎮痛剤及び鎮静剤の選択及び使用に関しては、 実験者は委員会の判断を求めるものとする。
  • (2)麻酔剤、鎮痛剤及び鎮静剤の使用が実験を損なう恐れがあるため、 それらを使用せずに痛みを伴う実験を行う場合、実験者は委員会の承認を得なければならない。
8.外科手術と術後管理
  • (1)無菌手術は、その目的で作られた室内でのみ実施すべきであり、 その室は清潔に維持管理する必要がある。無菌手術は、経験を積んだ者、またはその者の直接監督下で 実施しなければならない。
  • (2)無菌操作は、術後生存型大規模手術(体腔に切開を加えるすべての手術や、 回復後も永久に障害が残る可能性のある手術)すべてに適用するものとする。無菌操作には手術用滅菌手袋、ガウン、 帽子、マスクの着用及び滅菌器具の使用並びに術野の消毒に十分留意しなければならない。
  • (3)術後の管理には、適切な部屋あるいは設備を確保し、動物が麻酔や手術から 回復していることを確認するとともに、輸液剤、鎮痛剤及びその他の薬剤の投与、術野の手当、治療等を行わなければならない。
9.安楽死処置
  • (1)安楽死処置は、正当な技術をもって迅速かつ無痛的に実施するものとし、 それ以外の方法を採用する場合は委員会の承認を得るものとする。
  • (2)安楽死処置の方法としては、一般に、麻酔剤が使用されており、 ほとんどの動物種はバルビタール系薬剤の静脈内又は腹腔内過剰投与により、速やかに人道的に致死させることができる。 小動物にあっては、物理的方法(たとえばマウスの頚椎脱臼など)によることができる。しかし大型の動物にあっては、 科学的な評価が得られた速やかに致死させられる方法に限るべきである。動物によっては、チャンバー内で炭酸ガスを 作用させる方法もある。エーテルは有効であるが、引火性、爆発性があるため取扱には注意を払う必要がある。 エーテルで安楽死させた動物の死体は、エーテルが揮発消散した適切に処分しなければならない。クロロホルムは 人体に有毒であり、発癌性が疑われているので、使用してはならない。
  • (3)安楽死処置の実施にあたり、生きている他の動物に異変を感じ取られないように 配慮すべきである。 呼吸停止後も心拍動が保たれ回復する場合がある(特に炭酸ガスで深麻酔された動物は、 呼吸停止後も心臓は拍動を続け、やがて蘇生することがある)ため、死の判定は心拍動の停止でもって行わなければならない。
10.実験終了時の処置
  • (1)実験者は、実験を終了または中断して不要となった動物を、速やかに安楽死させなければならない。 又、死体の保管・処理にあたっては、悪臭の発生、病原体による環境汚染などの防止に努めなければならない。
  • (2)実験者は、実験終了後は速やかに、別に定める動物実験記録書を提出しなければならない。
11.安全管理等に特に注意を払う必要のある実験

 物理的、科学的に危険な物質あるいは病原体を取り扱う実験においては、人の安全を確保することはもとより、 飼育環境の汚染により動物が障害を受け、実験結果の信頼性が損なわれないように十分に配慮しなければならない。特に病原体を 用いて実験を行う場合には、関連する規則に従い、人の安全、動物間の感染防止に努めなければならない。

12.施設外での動物の飼育の禁止

 動物の飼育、繁殖は施設内でのみ行うものとする。

 附 則[平成20年6月18日付け20水研中第233号]
 この指針は平成20年6月18日から施行する。