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水産加工品のいろいろ
つみれ
つみれ
○つみれとは
つみれ製品
一般に普及しているつみれは、イワシなどの赤身魚を原料としたものですが、 地域によっては白身魚を原料としたものも生産されています。 つみれの形状は、中央部が凹んだ団子状ものが一般的ですが、 凹みのない団子状のものもつみれと呼ぶことや、 単に団子と呼んでつみれと区別することがあります。 つみれは、おでんの具材やつみれ汁などとして利用されるため、 冬季の消費が多いです。また、主な消費地が関東以北であることから、 つみれの消費は地域および季節に偏りがあります。
つみれは、魚肉を練り、湯の中で加熱した茹でかまぼこの一種です。 魚肉を練って湯の中で固めるつみれに似た練り製品は、 江戸時代にはすでに作られていました。 名前の由来は、摘入れ(つみいれ)から転じたもので、 当初は練った魚肉を指でつまんで湯に入れて作っていたためといわれています。
○生産と消費の動向
つみれの生産業者は、全国規模の大手加工業者と、 地先に水揚げされる魚を主な原料として製造する、 地方の加工業者に分けられます。 主な消費地が、関東以北であることから、これらの地域において生産量が多く、 大手加工業者を除いた地域的な生産量では、 銚子市が全国で大きな割合を占めています。
季節的な生産量は、消費に合わせて冬季に多くなります。年間の生産量は、 近年減少傾向にあり、つみれを含む茹でかまぼこの生産量は、 2003年は約3万3000tで20年前の2分の1以下になっています。
○原料選択のポイント
地域の加工業者が製造している赤身魚を原料とした、 一般的なつみれの製造方法について説明します。つみれの原料には、イワシ、 サバ、サンマ、アジなどが、肉質、水揚げ量、価格などを考慮して用いられ、 単一魚種を原料とする場合やいくつかの魚種を混合して原料とする場合や いくつかの魚種を混合して原料とする場合があります。 また、すけとうだらのすり身を添加して製造するつみれもあります。
製品の品質に最も大きな影響を及ぼすのが、原料の鮮度で、 良いつみれを作るためには、鮮度の良い原料が要求されます。 原料は、ほとんどの場合冷凍魚が用いられるため、高鮮度なものを凍結し、 適切に貯蔵することが必要です。また、赤身魚は凍結中に 脂質酸化を起こしやすいため、凍結期間の長い原料は良い原料とは言えません。 また、脂質含量が多すぎるものも、肉が湯中でうまく固まらず、 良い原料とは言えないでしょう。しかし、やや脂質を含むつみれは、 うまみがあるため、筋肉の脂質含量が10%前後の原料が最適とされています。
○加工の原理
つみれは、魚体から頭、内臓、背骨を除いた落とし身(採肉機によって採取し、 ミンチ状になった普通肉および血合肉)に調味料を混ぜ、 適当な大きさの団子状にし、中心部を凹ませ湯の中で加熱して固めたものです。
○実際の製造
イワシ、サバ、サンマ、アジなどの赤身魚で、鮮度良好で脂質含量の 適当な魚(10%前後)を原料に使います。原料は-20℃以下の低温で貯蔵し、 脂質酸化を防止します。最初に、頭および内蔵を除去します。 この工程は、手作業で行う場合と機械処理する場合があります。 内蔵の除去が十分に行われないものでは、製品に苦味を生じさせることがあります。
●製造工程図
原料
↓
凍結
水揚げ直後に凍結する。
↓
魚体処理
頭、内臓の除去。
↓
採肉
採肉機で落とし身を取る。
↓
凍結
冷凍パンで凍結し袋詰めして貯蔵。
↓
擂潰
肉を潰すとともに調味料を添加。
↓
成形
成型機を用いて作る。
↓
加熱
湯中で加熱。
↓
水切り
↓
冷却
冷蔵庫で冷却する。
↓
包装
↓
出荷
凍結しない。
つづいて採肉の工程です。採肉機を使用して背骨および皮と 肉部(普通肉および血合肉)を分離し、肉部をミンチ状の落とし身として取り出します。 落とし身は、ほとんどの場合使用までの期間を凍結貯蔵します。 その後、サイレントカッターもしくはすり潰し機を使用し、 凍結肉を潰すと同時に調味を行います。肉の練り度合いによって製品の性状が異なり、 仕向けによって肉の繊維を残したものと残らないものがつくられています。
次に、成形の工程です。従来は手作業で成形したものが多かったですが、 近年はほとんどが成形機を使用しています。1個の重さは、20~30gになります。 その後、成形機から加熱機の湯中に直接落ちて加熱され、両者は一連の工程となっています。 加熱は、 約90℃の真水で5~10分行い、中心部が75℃になるのを目安とします。
最後に、冷却・包装の工程です。冷却は10℃以下で行います。 冷却と包装は、工程が前後する場合があります。 すなわち、冷却後包装するものおよび包装後冷却するものがあります。 冷却後包装することにより、包装内の水滴の付着が防止されます。 包装後冷却するのは、加熱後の細菌汚染の可能性を低くすることを目的としています。 包装には、つみれをトレーに並べてラップするものおよびパックに入れて 密封包装するものがあります。出荷はほとんどの場合凍結することはなく、 10℃以下で流通し、消費期限は製造から7日前後に設定されています。
○製造装置
魚肉処理機・・・魚の頭および内臓を除去します
採肉機・・・背骨および皮と肉を分離し、落とし身をとります
サイレントカッター・・・凍結肉の粉砕および調味料を混合します
成型機・・・つみれの型に肉取りします
加熱機・・・湯中で魚肉タンパク質を熱凝固させるとともに殺菌します
○製品の形態・包装等
つみれ1個の大きさは、20gから30gです。これを数個トレーに 並べてラップ包装もしくはパックに入れ密封包装し、製品としています。
○食べ方
おでん、つみれ汁、吸い物の具材として食べます。
○使用する副原料
塩(2~3%)、砂糖(2~3%)、デンプン(馬鈴薯デンプン)を 副原料として添加します。このほか、卵白、化学調味料、タマネギや 生姜などの香味野菜が添加されます。
○品質管理のポイント
原料は、鮮度が良く、脂質酸化のあまり進行していないものを使用します。 原料処理では、内臓を完全に取り除きます。 不完全だと、苦味を感じるなど風味が悪くなります。製造工程以降は、 細菌汚染を防止するため、工程の衛生管理を行うとともに品温を速やかに低下させます。
○機能性成分
落とし身を水さらしをしないでつみれとするため、 製品は魚肉の有効成分のほとんどを含んでいます。 また、練り製品としては脂質含量が多いため、 赤身魚の脂質に多く含まれるEPAおよびDHAなどの高度不飽和脂肪酸含量が多く含まれます。
滝口明秀(千葉県内水面水産研究センター)