水産加工品のいろいろ
「煮干しいわし」
○煮干しとは
 煮干しとは、魚介類の乾製品の一種で、煮熟後乾燥させたものです。 煮干しいわしのような魚類煮干しのほか、サクラエビ、ホタルイカ、貝柱、ナマコ、アワビなどの煮干し品があります。
 生産の多い魚類煮干しには、原料別にカタクチイワシ、マイワシ、ウルメイワシを主体に キビナゴ、アジ類、サバ類、イカナゴなどの煮干しがありますが、最近は、カタクチイワシ製品が多いです。
 煮干しいわしは、古くよりかつお節や昆布などとともに、 わが国における代表的な旨味天然だし素材として愛用されてきましたが、 最近では、自然食・健康食ブームの中で、カルシウムなどの補給源としての評価が高いです。
 ここでは、カタクチイワシを主体とした煮干しいわしについてお話します。
煮干しいわし製品

○生産と消費の動向
 全国の煮干しの生産量は、ここ数十年では、平成3年の11万トンを最高に、 概ね8~9万トンの間で推移し、生産は横ばい状態にあります。 これは、マイワシ資源は激減していますが、煮干しの主原料でありますカタクチイワシ資源が比較的安定していることや、 消費者の根強い需要によるものと思われます。品目別ではカタクチイワシを主体とするいわし煮干し、しらす干し製品が多いです。

全国煮干しの生産量


煮干しの生産量
(水産物統計年報)

○原料選択のポイント
 煮干しの品質は、原料の良否に大きく左右されます。原料の条件としては、 鮮度が良好で腹切れや傷がないこと、脂肪含量が少なく、内臓にアミや餌を残していないもの、 形が揃っていることなどです。特に、脂肪含量の多いものは脂もの(脂タレなど)といわれ、 酸化や変色など品質が劣化しやすくなります。
 煮干し原料のサイズについては、カタクチイワシ及びマイワシでそれぞれ、 シラスで4cm以下、3.5cm以下、カエリで4~5cm、3.5~6cm、小羽で6~7cm、6~12cm、 中羽で8~9cm、12~18cm、大羽で10cm以上、18cm以上を標準としています。

○使用する副原料
 煮熟は塩水で行い、海水をそのまま使用することが多いですが、真水から塩水をつくる場合は食塩が必要です。
 原料の状況に応じて、ビタミンEなどの酸化防止剤などが使用されます。

○加工の原理   
 塩水で煮熟(加熱)することにより、内臓や筋肉が有する消化酵素の活性を停止させ、かつ微生物を減らし、 タンパク質の凝固を行います。乾燥工程で脱水し水分活性を低下させることによって、保存性を付与したものです。
 また、加熱などにより、旨味成分であるイノシン酸の分解酵素の働きを止めたり、減少をも防止します。

○実際の製造過程
 煮干し加工は、ある面では時間との戦いでもあり、作業時間の短縮や省力化及び生産能力の増大、 品質の向上のため、最近では機械化された工場が多くなっています。
 原料は、漁船から直接1トンタンクなどに水氷にした状態で加工場に運び込まれます。 煮干しは原料の鮮度が製品の品質を大きく左右するため、漁獲から加工まで短時間で処理することが最も大切です。 腹切れなどを起こさないように鮮度保持が不可欠です。
 次に選別作業ですが、フォークリフトなどで選別機入り口のタンクに運ばれ、 タンク内からバケットコンベアーで自動的に鱗とり機と選別機に入り、目的の原料以外の魚介類や異物が除去されます。 その後セイロのせの行程に入ります。選別された原料はオートフィダーに入り、 一定量(5~7kg)が落下しながらせいろ(煮ばら)の上に自動的に広げられます。 せいろサイズは180×90×5cm程度です。せいろ中の原料はコンベヤー上を移動しながら、 上下から噴出した水で洗浄されます。その後、20枚程のせいろが自動的に積み重ねられ、 1組単位でリフトで煮釜へ移動します。

 いよいよ煮熟です。煮熟は海水を用いて蒸気で煮熟温度まで加熱されます。消費者の減塩傾向を踏まえ、 通常海水には、食塩の追加添加は行いません。塩水を用いるのは、製品のつやや身のしまりを良くするためであり、 真水では艶がでません。しかし、最近では特殊用途向けで真水煮熟の製品も一部あります。 煮釜は220×220×150cm程度の角型で、通常2連式です。
選別・洗浄・セイロのせ 煮干しいわしの煮熟過程
 1釜にリフトに吊り下げられた20枚1組のせいろの2組を入れるので、1回で80枚程度のせいろが煮熟できます。 煮熟水の温度は95℃前後に自動調節されており、原料の種類、大きさなどで異なりますが、 カタクチイワシの中小羽では5~6分程度です。
 脂肪含量の多いものはやや長めに煮熟し、また温度も新鮮な原料は若干低めに、鮮度の落ちたものはやや高めに 煮熟します。煮熟が足りないと色艶がぼけやすく、塩分が少ないと製品に粘りがなく、形が崩れやすくなります。 煮釜の上部に浮上した油分や煮垢は海水の差し水をしながら洗い流します。 煮熟後、魚の付着物は、釜から揚げるとき、真水シャワーで自動的に洗い流されます。

 煮熟の終わったものは、機械で自動的に乾燥台車に乗せられ、しばらく放冷されます。 その後、台車ごと乾燥機に入れられ乾燥行程に入ります。乾燥温度は概ね、外気温度から12~3℃高めに調整します。 乾燥時間はカタクチイワシの中羽では24時間程度です。 カエリや小羽ではばら返しを行いますが、中羽では行いません。 扱いすぎるとかえって品質を落としてしまうからです。
 乾燥のばらつきを防止するため、送風機が移動し、 送風方向が自動的に変わり台車の入れ替えをしないですむ乾燥機も使用されています。 冬場など天気の良い場合は、天日乾燥も行われます。また天日乾燥と機械乾燥が併用される場合もあります。 カタクチイワシの場合、天日乾燥の方が色艶が青みを帯び、しなやかで良好なものができるという。 また、削り原料とする煮干しの場合も、天日乾燥の方がしなやかに仕上がり、削りやすいといわれます。 歩留まりは25%程度となります。最後に、選別・梱包が行われ出荷されます。

○製品の形態・包装等   
 生産者の段階では、8kgの段ボール箱に入れることが多いです。 小売では100g~1kg程度の小袋に詰められます。

○品質管理のポイント
 吸湿による乾燥のもどり、カビなどの発生、脂質の酸化や褐変、異物混入などが問題となります。
 脂質の酸化及び褐変化防止には-30℃以下の凍結貯蔵が有効とされます。 異物混入防止に十分な選別及び金属検知作業が必要です。

○成分の特徴
 カルシウムが多く、骨などの栄養源として有用です。 呈味成分としては、イノシン酸が多く煮干しの味の主体となっています。アミノ酸バランスも良好です。
かたくちいわしの煮干しの栄養成分
(可食部100g当たり:第5訂食品成分表)

○食べ方
 だし用として使用する場合には、そのまま煮るとえぐみが出やすいので、頭と内臓を取り除き、 水4~5カップに煮干し40g程度を入れ、中火にかけ、煮立つ直前に弱火にしてアクをすくい取り約10分間煮ます。 煮干しが沈んだら、布などでこして使用します。最近ではそのまま食べる用途も増大しています。
野中 健(元 長崎県総合水産試験場)

全国水産加工品総覧 編集委員会編
監修 福田裕、山澤正勝、岡崎惠美子 A5判、638頁、¥7,500(本体)+税 発行所(株)光琳
 この本は水産総合研究センターが主催する水産利用関係試験研究推進会議において、刊行することが合意され、都道府県の試験研究機関関係者など約150名もの専門家により執筆されたものです。
 さらに詳しく知りたいなど、ご興味がある方は、この本を是非ご覧になって下さい。

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