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水産加工品のいろいろ
蒸し板かまぼこ
蒸し板かまぼこ
○蒸し板かまぼことは
記録や資料などは関東大震災(大正12年)でほとんど失われていますが、 発見された文献からは、北条早雲時代(1432~1519)から桃山時代(1573~1595)の間に創製され、 当時は相模湾で漁獲されたオキギスのほかに、トラギス、ムツ、イサキから近年ではグチ類やキンメダイ、 ハモ等も用いて作られています。
擂り潰し
すり身を板に盛りつけるようになったのは、幕末頃からであり、 この頃から従来の焼く方法に代わり、蒸す方法が主流となり、 「蒸し板かまぼこ」として発展してきました。一時期漁獲物の減少により衰退しましたが、 大正7年頃、東シナ海の底曳網漁業によるグチ類が入荷するようになったこと、 大正12年の関東大震災を契機に、それまでの原始的な製法を一新して、新しい加工機械の導入と、 水さらしなどの技術普及によって、現在のかまぼこ加工の基礎を築きました。
平成16年において、小田原蒲鉾水産加工業協同組合では「小田原蒲鉾十か条」を制定し、 板付き蒸しかまぼこの品質について、グルタミン酸など添加物によって増加できない、 すり身由来の必須アミノ酸含量が5g/100g以上という品質基準が作られました。
○原料選択のポイント
現在では、原料の多くを遠洋または陸上上級すけとうだらすり身を用いて、 季節によりシログチやキンメダイ等を添加して生産されています。 また、相模湾沿岸の定置網で漁獲される小型のイサキをすり身にし、 それを100%原料とし生産する場合もあります。
シログチは淡白な白身魚で、東シナ海以南の海域で漁獲され、 そのほとんどが長崎、下関に水揚げされます。 以前は小田原や焼津に運ばれて落し身にされていましたが、 現在では産地で落し身にし、冷凍されて運ばれてきます。
小田原かまぼこが今日の基盤を築いたのは、大正に入ってからのシログチの利用にありました。 それまでは相模湾の魚を利用していましたが、鉄道機関の発達に伴い、 需要拡大に対応するためには原料確保が大事とばかり、 シログチの導入を決めました。以来、独特の粘りとつやのあるシログチのかまぼこは 大変な評価を得ることができ、現在も小田原かまぼこの主原料となっています。
○加工の原理
小田原のかまぼこは、小口から見ると扇の地紙を広げた形になっており、 昔ながらに職人の手技に添った形の美しさであり、今日のように、 機械化が進んでいなかった昭和初期には、添え木をあて、型くずれを防止し、蒸していました。 蒸した後は、角がとれた扇形の福々しい形になったものが今日の原型とされています。
九州地方の遠路から入荷するグチ類は、輸送に長時間を要したので鮮度低下が激しく、 生臭さがつよいが、この魚は足を形成する能力が高く、 そこで、水で晒す(さらす)という方法が考案されました。
水晒し(さらし)により、魚肉の臭み、脂肪分、弾力のもとになるタンパク質の 絡み合いを阻止する酵素類(水溶性タンパク質)を取り除くとともにpHの低下を改善し、 小田原かまぼこという白く弾力のあるかまぼこが製造されるようになりました。
また、小田原には丁度水晒し(さらし)に適した水(地下からの湧き水)があり、 特徴としては鉄や銅等の成分を含まないカルシウム、マグネシウムを程よく含んでいます。
●製造工程図
原料
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三枚おろし
↓
採肉機
↓
水晒し
(みずさらし)
↓
圧縮脱水
↓
調合
↓
擂潰
↓
裏ごし
↓
塩ずり
加水
↓
板つけ
↓
坐り
(すわり)
↓
加熱
↓
2段加熱
↓
冷水冷却
↓
包装
↓
検査
↓
製品
○実際の製造過程
かまぼこの板に可食部分をのせる作業を板つけと言うが、 ここで使用する板の材質は樅(もみ)等が使われます。 樅は水分を吸収しやすい特徴があり、かまぼこを蒸した後に出る余剰な水分について、 この板が吸収することから、品質的な保存性が良くなると同時に、 付き板部分においてもきれいに仕上がります。
板つけ
その後、加熱の工程を経て冷却の過程に進みます。 冷水シャワーまたは冷水に浸漬して急冷し、製品からの蒸気の発散を抑えて、 かまぼこ表面にシワが発生するのを防ぎます。 また、同時に潜熱等による変色の防止も兼ねています。
二次加熱
○製品の形態・包装等
近年は紅白のほか、緑と白の蒸し板かまぼこもハレの食材として製造されています。 また、イカの絵やアジサイの絵などの小型の板蒸し飾りかまぼこも市販されています。 各社独自の図柄と名称が入った包装紙で包まれるほか、高級かまぼこについては箱詰めも行われます。
○成分の特徴
主な原料のグチすり身には、アルギニンやリジン、バリンなどが多く含まれています。
○食べ方
かまぼこの最もポピュラーな食べ方は「板わさ」だと言われます。 小田原の蒸し板かまぼこは全国的に見ると、少し甘めに作られています。 生わさびのすりおろしとわさび漬がとても良くあいます。 何も付けずにかまぼこだけを食べた後、かまぼこにすりわさびやわさび漬をたっぷり乗せて、 わさびの風味を楽しみながら味わう「板わさ」は、小田原蒸し板の醍醐味です。
また、最近ではオリーブオイルと合わせて、 刺身のカルパッチョのように食べるのも粋なようです。
臼井一茂(神奈川県企画経営部主任研究員)