じゃこ天ぷら
- ○じゃこ天ぷらとは
- 愛媛県の宇和島・八幡浜地方の揚げ蒲鉾のことで、皮天ぷらとも呼ばれています。
ホタルジャコ、アジ、ヒメジ等の小魚の頭と内臓を除いて、骨や皮をつけた魚を肉挽機にかけ、
食塩と一緒にすりつぶし、油で揚げたものです。表面はこんがりきつね色、中は灰色で、
旨味や弾力がある素朴な製品です。特に、ホタルジャコを使用したものが、最高級品とされています
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じゃこ天ぷら |
- ○生産と消費の動向
- 愛媛県の揚げ蒲鉾のほとんどはじゃこ天ぷらであり、
2003年の愛媛県の年間生産量は約4700トンで、1990年以降ほぼ横ばいで推移しています。
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愛媛県の揚げ蒲鉾の生産量 |
年次 | 生産量 |
1975年 | 4,003t |
1980年 | 3,835t |
1985年 | 6,158t |
1990年 | 4,828t |
1995年 | 4,993t |
2000年 | 4,984t |
2003年 | 4,689t |
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- ○原料選択のポイント
- じゃこ天ぷらの主原料魚には、ホタルジャコ(全長12cm、南日本の深海に生息)が、
そのほかにアジ、タチウオ、グチ、ヒメジ等も使用されています。原料魚は、鮮度の良いものが要求されます。
- ○使用する副原料
- 食品添加物は、調味料としてアミノ酸(グルタミン酸、グリシン、アラニン、プロリン等)、
保存料としてソルビン酸、甘味料として砂糖、ステビア、みりん、甘草等、着色料としてぶどう糖、
キシロース等、隠し味として魚肉エキスや魚醤油、そのほかにデンプン、卵白、清酒等が使用されます。
それぞれの添加物の種類や量を変えることによって、各企業のじゃこ天ぷらの特徴を出しています。
- ○加工の原理
- 蒲鉾の加工原理と同様ですが、蒲鉾の製法と違うことは、水でさらしていない魚肉を使用するところです。
さらしていない魚肉に食塩を加えてすりつぶすと、糊状のすり身ができます。これを成形して油で揚げると、
固まって天ぷらになります。
- ○実際の製造
- 原料のホタルジャコは、冷凍保存可能ですが、脂質の酸化を防ぐために空気に触れないようにすることが望ましいです。
その他の小魚は、鮮度の良い生魚を使用することが重要です。
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●製造工程図 |
原料 | よく冷やしておく。 |
↓ | |
調理 | 原料魚の洗浄、頭と内臓の除去。 |
↓ | |
水洗 | 内臓等が残らないように氷水で洗浄。 |
↓ | |
ミンチ | ミンチ皿1~1.5mm |
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擂潰 | 臼および砕肉はよく冷却し、20~30分擂潰。 |
↓ | |
肉糊 |
↓ | |
成形 | 扁平状に延ばす。 |
↓ | |
油ちょう | 180℃で2分。 |
↓ | |
脱油 | スポンジローラに挟む。 |
↓ | |
冷却 | 室温まで冷却。 |
↓ | |
包装 | |
↓ | |
製品 | |
- 最初に、手作業により頭と内臓を除去します。この時に、内臓は残らないように完全に除去することが大切です。
続いて冷却水を使用してよく洗浄し、小魚を骨と皮ごと約1~1.5mmのミンチ目皿を使い分けてミンチにかけます。
約1mmの目皿を使用すれば、ジャリ感のないじゃこ天ぷらが、約1.5mmの目皿を使用すれば、
ジャリ感のあるじゃこ天ぷらが製造できます。
- すり潰し機に、魚肉、食塩、グルソー、グルコース、デンプン、氷等を加えて、20~30分すり潰して肉糊とします。
臼は使用する前に十分冷やしておき、砕肉を冷やしきった状態で使用します。続いて扁平状に成形します。
成形は、ほとんど自動成形機で行われていますが、昔ながらの木枠を使用して手作業で行っているところもあります。
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いよいよ揚げます。油は、大豆白絞油や、菜種油が使用されて、150~180℃で1~2分揚げます。その後、
スポンジ付きローラに挟んで油切りを行います。手揚げの場合は、簀の上に広げて油切りを行っています。
冷却器を使用すると、落下細菌の付着も少なく衛生的です。
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じゃこ天ぷらの配合の1例 |
材料 | 重量(割合) |
魚肉 | 5000g |
食塩 | 90g(1.8%) |
グルタミン酸ナトリウム | 15g(0.3%) |
グルコース | 16g(0.32%) |
デンプン | 250g(5%) |
氷 | 500g(10%) |
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- ○製造装置
- ミートチョッパー、すり潰し機、天ぷら成形機、フライヤー、脱油機、冷却機等
- ○製品の形態・包装等
- スーパーで販売されているジャコ天ぷらは、1袋3枚入りが主であり、時には5枚入りもあります。
また、1口サイズで10枚入りもあります。形状は長方形が主で、円形タイプや正方形タイプも販売されています。
長方形の大きさは、平均11cm×6cm×0.9cmで、1口サイズは平均6cm×4cm×0.9cmです。
1枚の重量は、20年前は50g~55gであったのに対し、ここ10年前から45~50gが主となり、
小型化し、1口サイズや円形のものまで、いろいろな形状の物が販売され、多様化しています。
- ○表示
- 要冷蔵(1~10℃)
- ○品質管理のポイント
- 夏場では、2~3日が限度ですが、冷蔵庫に貯蔵すると1週間ぐらい保存可能です。
さらに、真空包装や窒素ガス置換包装すると2~3週間保存可能です。
- ○成分の特徴
- じゃこ天ぷらは、他の練り製品と比較して、機能性成分であるカルシウム(Ca)、
エイコサペンエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)が多いことが特徴です。
- ○食べ方
- ①焼いて大根おろしと醤油をかけて食べる。
- ②そのまま、マヨネーズをつけて食べる。
- ③おでんにして食べる。
- ○じゃこ天ぷらにまつわる話題
- 愛媛県の蒲鉾は、1600年代、宇和島藩主となった伊達秀宗公が、
仙台から職人を連れてきたことに由来しています。じゃこ天ぷらの製造は明確にはわかっていませんが、
江戸時代に始められたと言われています。
平岡芳信(愛媛県工業技術センター)
現 水産総合研究センター中央水産研究所