水産加工品のいろいろ
「乾し海苔」

○乾し海苔とは

 私たちがいつも食べている乾し海苔は、スサビノリやアサクサノリなどの海藻を、和紙と同じ作り方で薄い板状に乾燥したものです。
 大宝律令(701年に完成した日本の律令)にも記述が見られ、古くから日本人の食料として利用されてきたことがうかがえます。江戸時代の享保年間には海苔すきが始まり、現在のような形の乾し海苔が作られていたようです。
 海苔1枚の規格は19×21cmで重量は約3gほどです。
 乾し海苔となる原藻は、南は鹿児島県から北は宮城県までの主に太平洋側の内湾で養殖されています。


○生産と消費の動向

 乾し海苔生産枚数は、昭和40年代後半の養殖技術の普及に伴って次第に増加しました。大型全自動機械の導入が進んだ昭和60年前後以降は、海苔の年間生産枚数はほぼ80億枚から110億枚の間で推移しています。
 産地別の内訳は年変動がありますが、有明海が約40%、瀬戸内海が約35%、伊勢湾以東の東日本が約25%となっています。br>  ほとんどは国産ですが、最近では韓国産や中国産のものが見受けられるようになりました。
 年間の消費量は近年約100億枚強で推移しており、コンビニエンスストアのおにぎりを始めとする業務で利用される割合が、年々増加して60%を超えています。
 一方、贈答での消費は景気の低迷やギフト商品の多様化などによって年々減少して、近年は7~8%の消費に過ぎません。家庭での消費量は約30億枚で、毎年ほとんど変 わりません。


○原料選択のポイント

 乾し海苔は色が黒くつやが豊富で、歯切れが良く、味のあるものが良いとされます。また、ノリは複数回の摘採を行うため、初回摘みが品質的に優れ、病気の感染がなく、縮れやくびれなどの芽イタミと呼ばれる症状のない原藻が高品質の乾し海苔を生産するのに適しています。

○加工の原理

 乾し海苔加工は紙をすくのと同じ原理で行います。品質の劣化を防ぐために、できるだけ短時間で終了しなければならず、現在は、ノリ原藻から乾し海苔製品になるまですべて全自動化されています。

○製造の実際

  1. 原藻
    摘採回数が進むと葉体が厚く堅くなるなど、漁場環境や養殖管理の違いで品質が異なるため、原藻の品質を損なわない製造条件選択が重要となっています。
  2. 貯留
    細菌の付着や自己消化による品質低下を防ぐため、低温での保存を心がけなければならなりません。
  3. 細断
    刃の切れ味を良くし、原藻の品質に応じてミンチの目の大きさを調整し、穴あきや縮み等を防ぎます。
  4. 調合・海苔すき
    ノリ質に応じ乾燥後の重量を考えて調合・海苔すきを行います。
  5. 脱水・乾燥
    製造工程の中で品質に最も影響を及ぼす行程となります。乾燥工場の特性を熟知しておき、ノリ質に合わせた乾燥する温度、湿度等を調整することが重要となります。基本的には、柔らかいノリは低温で時間をかけて乾燥、かたいノリは高温での乾燥を心がけ て行わなければなりません。
  6. 選別・結束
    異物検出器などの選別機器の整備調整は確実に行い、不良品の出荷を未然に防ぎます。

○製造装置

 現在の乾し海苔製造は、全自動乾燥機をメインとし、貯留装置、ミンチ、調合機、異物検出機、結束機などの周辺機器を組み合わせて行われます。現在ではすべての製造工程が自動化されており、貯留装置に原藻投入後は、100枚の束になった乾し海苔が出てくるまで、あまり人手がかかりません。
 全自動乾燥機は年々大型化が進んで処理能力が増大し、最も大型のものでは1時間あたり1万枚以上の乾燥能力があります。このため、最初の製品が完成したのちに重量などが規格外だったことが判明しても、すでに大量の規格外乾し海苔が乾燥機内に存在することとなってしまいます。機械が大型化すればするほど、原藻の品質を的確に把握することが重要となってきます。

○品質管理のポイント

 乾し海苔の品質は、原藻の良し悪しが大きな比重を占めています。栄養塩豊富な海で育った、色が濃く病気や芽イタミのない葉体を材料にすることが最も重要となってきます。乾し海苔の加工は、原藻の持っている品質をいかに落とさずに製品に仕上げるか、ということに尽きます。それには、全自動乾燥機内部の乾燥温度や湿度のみならず、乾燥工場全体を乾燥装置として考えた温度、湿度、空気の取り入れや排出等の制御が必要となります。

○安全・衛生管理

 これまで乾し海苔の衛生管理としては、乾し海苔製品へ異物など余計なものが混入を防ぐことに主眼が置かれていました。しかし近年、食品に対する安全衛生管理の徹底が求められており、今後乾し海苔に対しても生菌数の制御が重要となってきます。一般に乾し海苔でも1gあたり1万個から10万個の生菌が検出されますが、中には100万個のもの生菌が見られるものもあります。脱水用スポンジの洗浄など乾燥工程においての衛生管理の徹底が重要です。


岩淵光伸(福岡県水産海洋技術センター有明海研究所)

全国水産加工品総覧 編集委員会編
監修 福田裕、山澤正勝、岡崎惠美子 A5判、638頁、¥7,500(本体)+税 発行所(株)光琳
 この本は水産総合研究センターが主催する水産利用関係試験研究推進会議において、刊行することが合意され、都道府県の試験研究機関関係者など約150名もの専門家により執筆されたものです。
 さらに詳しく知りたいなど、ご興味がある方は、この本を是非ご覧になって下さい。

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