タイの郷土料理

 "魚の王様"と呼ばれるタイ。日本列島特有の豊かな風土や気候を象徴するような、優雅さと偉容をあわせ持つみごとな姿は、古来から日本人に珍重されてきました。全国各地には、地方色豊かな多くの郷土料理があります。これらはいずれも、晴れの日の祝膳料理として出されるものが多いようです。ここではその一部をご紹介しましょう。
・小平家(小倉地方)
 6〜7cmの小ダイを3枚におろし酢でしめる。一方オカラに麻の実やキクラゲを刻み込む。柑橘の汁をかけて、握り寿しの要領で一口大にオカラをにぎりタイにのせる。
・酒ずし(鹿児島)
 豪放な薩摩料理の一つ。鹿児島の地酒を使う。固めに御飯を炊き、さましてから、酒・砂糖・塩ですし飯をつくる。タイを酢でしめ、ゆでた芝エビ、薄味のイカも加え、フキ・シイタケなどの野菜をきざみ用意した桶にすし飯を載せ、酒を振り掛けながら重ね、4〜5時間蓋をしてならす。
・鉢盛料理(宇和島)
 高知の皿鉢料理に匹敵する。大皿・大鉢に無造作に盛り合わせる。祝いや祭りに作られるもので欠かせないものはタイの生け造り・タイめん・フカの湯ざらしの3者で、ほかにバラエティー富んだ材料を使う。
・しっぽく料理(長崎等)
 卓を囲んでなごやかに食事を楽しむのが、しっぽく料理。お鮨・小菜盛り・大鉢・小鉢・香のもの・梅鉢といろいろな魚介類が続いて出る。最初のお鮨にタイの切り身・唐人菜・すり身で作った紅白素麺等にすまし汁を注ぐ。
・サハチ料理(高知・徳島)
 久谷や有田の大皿に祝い事の時は必ずタイの生き造りを中心に刺し身類・すし・口とり肴などを盛り込む。果物・素麺等も加える。豪放な南国料理は正に海洋バイキング。
・タイめん(瀬戸内海)
 じっくり煮込んだタイと素麺の盛りあわせ。素麺の上に泳ぐようにタイを置く。
・鳴門ダイの茶漬け(徳島)
 鳴門海峡の激しい潮でもまれたタイは身が締まって殊のほか美味。刺し身でもてなした後で刺し身の一部を醤油にみりんを加えたつけ醤油に4〜5分漬ける。これに白ゴマをまぜ、熱い御飯に載せ、おろしワサビ・もみ海苔をたっぷり載せ、熱い煎茶をかけてできあがり。
・タイめし(瀬戸内海)
 来島海峡で獲れる味の良いタイは神功皇后の昔から知られている。米は炊く前に洗ってざるにあげ、活きの良いタイの鱗、腹ワタを取って、皮目に切れを入れる。釜にだし昆布を敷いて洗った米をいれタイをそのまま載せ、醤油、酒、塩で味を整え、タイの骨を外して、身をほぐす。
・味噌なます(宮崎)
 タイのアラからダシを取り、味噌をまぜてさまし、熱い御飯にかける。
・タイかぶら(京都)
 タイのアラを京都名産のかぶらと薄味で煮こむ。タイの旨味がかぶらにしみこむ。
・タイの潮汁
 上品なコクと風味が捨て難い、美味な一品。アクや脂を丁寧に取り除き、塩だけで薄味に整えたいもの。
・タイの唐蒸し(石川県金沢市)
 昔から婚礼の席に欠かせなかった代表的な加賀料理。花嫁の持参したタイを婿方で調理し、見事さを披露した。背開きしたタイには油炒りした野菜と卯の花が詰められている。
・タイの子塩辛(新潟県柏崎市)
 柏崎市の幻の名産品で、タイの卵巣を塩蔵し、半年間樽に漬け込んだ高級珍味。現在は、タラ等の魚卵製品に応用されている。
・小ダイの笹漬け(小浜地方)
 小ダイを三枚におろし酢〆し笹の葉で包んで、賞味する。寿司種に用いたり、そのまま酒の肴としたりいろいろに賞味する。
・雀ずし(和歌山・三重・奈良)
 大阪・和歌山では駅弁として売られ老舗の名物ともなる。要はタイの握りずしである。タイの塩加減と酢加減が重要で長年の経験と勘による。
・タイ浜焼(瀬戸内海)
 腹わたと鱗を取ったタイを1日位塩をなじませじっくり焼く。商業用の焼き釜もある。竹の籠で全国に出荷。
・タイ骨酒(能登)
 タイをうす塩で焼く。大きい鉢に入れ熱い日本酒を注いで飲む。
・タイの骨蒸し(瀬戸内海)
 頭を真半分に割り、だしと酒で蒸したもの。今治の名物料理。
・ヒコヤ飯(若狭湾)
 クロダイの炊き込み御飯。一旦、魚を焼き、米の状態から一緒に炊き込み、炊き上がったら骨を除き、身をほぐして味を整え御飯とまぜあわせる。
・石焼き鍋(男鹿半島)
 男鹿半島に古くから伝わる。こぶし大の石を10個ほど用意し、たき火の中で真っ赤になるほど焼く。木桶の中にタイをはじめサケ・アワビ・サザエ・ネギ等を入れて水を注ぎ焼き石を一度にほうりこむ。煮たったら味噌仕立で賞味する。
・タイみそ(仙台地方)
 江戸時代に仙台湾でタイの大漁があった時、処理保存法として開発されたといわれタイを蒸して身をほぐし、甘味曾にまぜる。

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