平成30年5月16日(水)に、都府県水試ほか8機関から9名の受講者を迎えて、「潜水によらないアワビ類稚貝の調査方法」という内容で、横須賀庁舎と周辺の海岸にて体験型講座(ワークショップ)を開催しました。
アワビ類には、大型アワビと小型アワビ(トコブシ類)があり、前者には更に暖流系アワビ類(クロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビ)とクロアワビの北方型亜種であるエゾアワビがあります。近年、特に暖流系アワビ類の漁獲量が各地で減少しています。その原因としては、乱獲や密漁、生息環境悪化による親貝の減少や、それにともなう産卵量の低下による稚貝発生量の減少等、様々なことが想定されますが、減少要因が明確でない場合も多くあります。そこで、このワークショップでは、暖流系アワビ類の稚貝がどの程度発生し、またそれらがどの時期に大きく減耗しているかについて調査するための手法をテーマとしました。初心者にとって殻長1 cm以下の稚貝の発見は難しいことに加え、職員による潜水調査を実施できない研究機関も増えていることから、潮間帯で簡単に実施できる調査を実際に体験してもらいました。
午前中は、趣旨説明と注意事項の確認の後に横須賀庁舎近くの潮間帯岩礁域に出向き、アワビ類の稚貝の生息場を実際の目で見ていただくとともに、現場での稚貝の探索・採集及び環境調査の実地体験を行いました(実際に採集を行ったのは特別採捕許可を受けている当所職員)。午後は、採集物の種査定や測定の方法についての講習を行いました。その後、当所研究員と京都府農林水産技術センター海洋センター技師の篠原義昭氏から、神奈川県と京都府それぞれにおけるアワビ類稚貝の生息場の環境特性と、それらを踏まえた生息場の造成手法に関する発表がありました。発表後に設けたディスカッションの時間では、地域によるアワビ類稚貝の生息環境にどういった差異があるか、またそれぞれに適した資源増殖策はどのようなものか等について、他の参加者もまじえて活発な議論が交わされました。
横須賀庁舎で毎年開催してきた本ワークショップも今回で6回目となりましたが、アワビ類の調査・研究に携わる多くの方々にとっての有用な情報交換の場となってきたものと思います。この講座を通じて広がった知識と経験が、日本各地の暖流系アワビ類資源の回復と持続的生産に役立てられることを期待しています。