第4回アワビ類天然稚貝調査法ワークショップを開催

 平成28年5月23日(月)に、県水試等8機関から12名の受講者を迎えて、「潜水によらないアワビ類稚貝の調査方法」という内容で、横須賀庁舎と周辺の海岸にてワークショップを開催しました。
 アワビ類には、大型アワビと小型アワビ(トコブシ類)があり、前者は更に暖流系アワビ類(クロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビ)とクロアワビの北方型亜種であるエゾアワビがあります。近年、特に大型の暖流系アワビ類の漁獲量が減少しています。その原因は、乱獲による親貝の減少による産卵量の低下、それにともなう稚貝の減少、磯焼けによる餌の減少、密漁等が想定されていますが、原因がわからない場合が大半です。原因を確定するには、アワビが成長過程でいつ大きく減耗しているか、そもそも稚貝が発生しているかについて調査が必要です。これまで横須賀庁舎周辺で実施した稚貝調査では、殻長1~2cmの段階で大きく減耗が起こり、このことが再生産のボトルネックとなっていることが明らかになってきました。このような知見は天然資源の回復に向けた資源管理・増殖の方策を考えるうえで重要な情報になります。
 アワビでは漁獲統計や潜水調査による殻長数cm以上での報告はありますが、1cm以下の稚貝の調査は難しく、報告例は限られています。また、潜水調査には2名ひと組での実施が必須ですが、県水産研究機関では潜水技能を有した職員の異動などによって実施できないところが増えています。そこで、今回、殻長1cm以下の稚貝が棲息している場所で、潜水を伴わず、簡易に実施可能な調査方法についての体験型講座を実施することになりました。
 講師は横須賀庁舎の職員に加えて、西海区水研・資源生産部の清本節夫氏が加わり、現場でのアワビ稚貝探索・採集、環境調査などについての実地体験と講義を行いました(実際に採集を行ったのは特別採捕許可を受けている当所職員)。午前中の干潮時間帯は、横須賀庁舎周辺の岩礁海岸に出向き、どのような場所のどのような石にどんな形でアワビ類の稚貝が棲んでいるのか、どうやって調べるかについて現場で講習を行い、午後は、採集物の種査定や測定などの処理について実際に体験していただきました。
 今回のワークショップでは、実地体験の後にディスカッションの時間を設け、海域による稚貝分布の特徴の違いと最適な調査方法について参加者間で議論を深めることができました。参加者の感想を次回に生かして有意義なものを目指していきます。

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