平成25年4月25日(木)に、県水試等9機関から11名の受講者を迎えて、「潜水によらないアワビ類稚貝の調査方法」という内容で、横須賀庁舎と周辺の海岸にて研修会を開催しました。
アワビ類には、大型アワビと小型アワビ(トコブシ類)があり、前者は更に暖流系アワビ類(クロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビ)とクロアワビの北方型亜種であるエゾアワビがあります。近年、特に大型の暖流系アワビ類の漁獲量が減少しています。その原因は、乱獲による親貝の減少による産卵量の低下、それにともなう稚貝の減少、磯焼けによる餌の減少、密漁等さまざまですが、原因がわからない場合が大半です。原因を確定するには、いつ大きく減耗しているか、そもそも稚貝が発生しているかについて調査が必要です。アワビでは漁獲統計や潜水調査による数cm以上での報告はありますが、1cm以下の稚貝の調査は難しく、報告例は限られています。また、潜水作業は2名ひと組での実施が必須であり、県水産研究機関では人員削減によって実施できないところが増えています。そこで、今回、当横須賀庁舎の近隣で昨年10~12月の産卵から育った1cm以下の稚貝が棲息している場所で、潜水を伴わず、簡易に実施可能な調査方法の研修を行いました。
講師は増養殖研究所資源生産部(横須賀庁舎)の黒木洋明に、東北水研・資源生産部の高見秀輝氏が加わり、現場でのアワビ稚貝探索・採集、環境調査などについての実地研修と講義を行いました。午前中の干潮時間帯は、横須賀庁舎周辺の岩礁海岸に出向き、どのような場所のどのような石にどんな形でアワビ類の稚貝が棲んでいるのか、どうやって調べるかについて実地研修を行い、午後は、採集物の種査定や測定などの処理についての講習を実施しました。
初めての研修会に多数の参加者をお迎えし、一時は低気圧通過による時化の予報により肝心のフィールド実習の開催が危ぶまれましたが、結果的には好天に恵まれました。ほとんどの参加者は自らアワビ類稚貝を見つけ出すことができ、好評をいただきました。参加者の感想を次回に生かして有意義な研修会を目指していきます。