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さかなづくしこちやぶし
作者不明,作成年不明,4丁,19cm
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 この冊子は「さかなづくし こちやぶし 上」と「肴尽こちやぶし 下」の合本です。
 江戸時代末期に流行した俗謡「こちゃえ節」の歌詞を魚や水産動物の名に入れ替えた替え歌集です。魚や水産動物に替えた部分は白抜き文字になっています。「こちゃえ節」の元歌は「お前を待ち待ち蚊帳の外、蚊にくわれ、七つの鐘のなるまでも、こちゃえ、七つの鐘のなるまでも、こちゃえ、かまやせぬ」と「こちゃえ」という囃子詞がはいっている歌でした。明治時代にはこの節回しで「お江戸日本橋」の替え歌も作られています。
 上巻表紙には「仙女香」の文字が見えます。仙女香は白粉で、文政期から天保期にかけて浮世絵や絵草紙に描き込まれることがよくありました。表紙の鯛や海老がお化粧しているように色づけされています。この替え歌集の作成年は不明ですが、仙女香が流行していた時代と同時代と推測できます。

【替え歌例(釈文と元歌)】
▲おまへをますますはやのそと、かにくはれ、なまづのかにのなるまでも、コチヤ、なまづのかにのなるまでも、コチヤ、かまやせぬ
 (お前を待ち待ち蚊帳の外、蚊にくわれ、七つの鐘のなるまでも、こちゃえ、七つの鐘のなるまでも、こちゃえ、かまやせぬ)
▲今でのたてものゑび蔵にきす五郎、いか井のくめさにはも四郎、コチヤ、ばん東いちのむつ五郎、コチヤ、かまやせぬ
 (今での立て者 海老蔵に菊五郎、岩井の粂三(郎)に半四郎、コチヤ、坂東一の三津五郎、コチヤ、かまやせぬ)
▲くどうたいもんますもとの、このしろう、五郎はゑび蔵で十郎は、コチヤ、うぐいのばいこうで、おゝあさり、コチヤ、[鎌の絵][羽矢の絵]せぬ
 (工藤左衛門 松本の幸四郎、五郎は海老蔵で十郎は、コチヤ、尾上の梅幸で、大当たり、コチヤ、かまやせぬ)
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