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相模灘海魚図絵
湊左文,作成年不明,57丁,25cm (写本)
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 相模灘の魚、鮫、鯨、蛸、烏賊、海月、海牛などの彩色図とその解説文の構成で書かれています。本草学的な解説が中心ですが、それに混じって歌川広重の「魚づくし」から引いてきた狂歌が添えられている項目もあります。例えば、鯒の項では真垣春友の「あらくうつ波の下より生れ出て鯒はかしらのひしけたりけむ」が、カサゴの項では年舎富春の「時来ぬとひらきて見ても五月雨にほすいとまなきからかさごかな」が添えられています。こうした項には広重の「魚づくし」を意識したと思われる絵も添えてあります。2尾の鯒を描きそれぞれ表と裏から描写する構成や、口を開けた赤いカサゴの描写は「魚づくし」を真似たものと思われます。
 巻頭には「相模灘海魚図絵序」があり、序の署名に相陽三崎の漁人湊左文とあります。序の中ほどの本文横に「本ノマヽ」という注釈があることから、別に底本が存在し当館所蔵本は写本であると推測されます。
 また、最後から2丁目に「蔵月明」の朱印があることから、明治から昭和の石川県の俳人で江戸・明治期の歌集の収集家でもあった蔵月明の蔵書だったことがあったのではないかとも推測されます。
 後ろ見返しに描かれた蝉の落書きは誰がいつ描いたのか不明です。
 東京国立博物館画像検索データベースで検索できる『相模灘海魚部』と似ています。
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